東京高等裁判所 昭和28年(ネ)1193号 判決
控訴人訴訟代理人は、「原判決を取消す。控訴人(債権者)と被控訴人両名(債務者)との間の東京地方裁判所昭和二十七年(ヨ)第一、三五六号不動産仮処分事件につき同裁判所が昭和二十七年四月一日になした仮処分決定を認可する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求むる旨申立て、被控訴人等訴訟代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、控訴人訴訟代理人において、「本件宅地の西側に接し南北に通じている道路は私道であつて、民法第二百十三条第二項にいう公路というにはあたらない。」と述べ、被控訴人等訴訟代理人において、「右の道路が私道であることは争わないが、これを公路というを妨げない。」と述べた外は、原判決事実摘示の記録と同一であるから、ここにこれを引用する。
<立証省略>
三、理 由
控訴人が現に所有する東京都中野区本町通三丁目一番の七宅地百九十五坪九合三勺(以下本件宅地という)は、もと訴外浅田政吉の所有であつたが、分筆せられて訴外叶田義雄の買受けるところとなり、昭和二十三年十月八日に控訴人が右叶田からこれを買受けたものであること、同宅地の東方に接する同町同番の九、幅三間半、長さ約十一間半、面積四十坪四合二勺の宅地(以下本件通路という)を、被控訴人金井巽が前示浅田政吉から昭和二十七年に買受けその所有権を取得したこと、被控訴人等が本件通路上に控訴人主張の如き建物(以下本件建物という)の建築工事中であることは、当事者間に争がない。
控訴人は本件通路上にその主張の如き囲繞地通行権(民法第二百十三条第二項の)、もしくは通行地役権(民法第二百八十条の)を有するところ、被控訴人等の本件建物の建築により、右通行権もしくは地役権を妨害せられることとなるので、被控訴人等に対し通行権確認並びに本件建物収去の本訴を提起しているのであるが、もし本件建物の建築が完成すると、本案訴訟に勝訴しても、その判決の執行が著しく困難となるから、本件仮処分の申請をなすというので、まず控訴人の保全せんとする通行権もしくは地役権の存在の点から判断を進めるに、この点に関する当裁判所の事実上並びに法律上の判断は、当審で新たに提出せられた成立に争なき甲第八号証――本案訴訟事件の検証調書謄本――を総合してみても、原判決の理由中に説示するところ(原判決六枚目記録七九丁表二行目より同七枚目記録八〇丁裏十行目まで)と、同一であるから、ここにこれを引用する。なお控訴人は、本件宅地の西側に接する私道(右甲第八号証の添附図面に「西側の私道」と記載してあるもの)は、民法第二百十三条第二項にいう公路にはあたらないと主張し、これが私道であることは、被控訴人等も認めるところであるが、同法条並びに同法第二百十条にいう公路とは、必ずしも公道のみを指すものとは限らず、公衆が自由に通行し得るようになつている道路であればすべて該当すると解すべきであつて、前示原判決理由中に記載したとおりの右私道に関する認定事実に、右甲第八号証を総合してみると、右私道は恰も公衆の自由に通行し得る道路であると認められるから、本件宅地が公路に通ずるようになつたのであるという原判決説示どおりの認定は別段妨げられない。
よつて他の点の判断に入るまでもなく、本件仮処分申請は、その保全せんとする本案訴訟の請求権自体の疏明なきに帰し、又保証を立てしめて疏明に代えることも適当ではないから、これを認容して原裁判所がなした本件仮処分は取消を免れず、本権仮処分申請はこれを却下すべきであり、これと同趣旨の原判決は相当であつて、本件控訴はその理由なく棄却すべきものとし、控訴費用につき民事訴訟法第九十五条第八十九条を適用して、主文の如く判決する。
(裁判官 斎藤直一 菅野次郎 坂本謁夫)